クリスマスイブの きゃく
フィリス・ネイラー 作
さいとう ゆうこ 訳
フーム、こりゃ なんじゃろう？
はて、おかしな もんは なんも みえん。
おかしな おとも においも せんが・・・
じゃが、なんか あるで――
アモスは あたまを おこし、
おかみさんの エルマを ちょんちょんと つっつきました。
「ほい、エルマよ。なんか あるで」
「ムニャムニャ・・・ もう はるが きたん？
タンポポが さいとるん？」
と エルマは ねむそうな こえで いいました。
「うんにゃ。はるは まだ こん」
「ほんじゃ、やまかじ？」
エルマは ちょっと しんぱいそうな こえに なりました。
「うんにゃ。やまかじでも ないで。ゆきかも しれんが・・・」
「ありゃま、ゆきなら まえから ふっとるに。ほわーあ」
と エルマは あくびを しました。
「はるでも なし。やまかじでも なし。
そんじゃ、びっくりすることは なあんも ないだが」
「フーム・・・ じゃが なんか あるで・・・」
エルマは もう いびきを かいています。
アモスは のそのそと おきあがり、ほらあなを ぬけだしました。
ゆきは ふかぶかと つもっています。
アモスは くんくんと かぜの においを かぎました。
まつばの においに まじって、ハタネズミの においもします。
いっぽいっぽ ゆきを ふみしめながら、
アモスは はやしの なかを あるいていきます。
うさぎが アモスの そばを はしっていきました。
つよい あとあしで ゆきを けりながら、
ピョンピョンと とんでいきます。
きのうえでは フクロウが、
ぎょろりとした めをして アモスを じっとみています。
むらの まきばまで くると、アモスは たちどまりました。
そらいっぱいに ほしが かがやいています。
じめんの ゆきも きらきらと ひかっています。
ひろい まきばが、まるで ぎんいろの みずうみのようです。
「ほおー、なんと きれいなこと――
フーム・・・ じゃが、まだ なんか あるで・・・」
アモスは また あるきだしました。
―― 以下略 ――
（絵本のデザインは、このページと同じではありません）
