本好き カピール
マノラマ・ジャファ 作
さいとう ゆうこ 訳
むかし、インドに、カピールという男の子がいました。
カピールは、本が大すきでした。
朝おきると、すぐに本をとりだして読みはじめます。
インドの子どもたちは、小さいときから家の仕事をてつだいます。
でもカピールは、本を読みだすと、
仕事のことも、あそぶことも、みんなわすれてしまうのでした。
おかあさんは言いました。
「カピール。これからは、
仕事が全部おわるまで、本を開いちゃいけません。
いいわね」
ある朝、カピールがテーブルの上を見ると、
あたらしい本が１冊ありました。
あ、何の本だろう？
わくわくしながら本に手をのばしたカピールは、
ハッとおかあさんのいいつけを思い出しました。
チェッ、ざんねんだな。
よおし、大いそぎで仕事をやってしまうぞ！
カピールはいそがしく働きながら、
ずっとあの本のことばかり考えていました。
ああ、あれはどんな本だろう。早く読みたいな……
そして仕事がおわると、テーブルのところにとんで行って、
すわりもしないで読みだしました。
「カピール！ カピール！」
台所で、おかあさんが呼んでいます。
でもカピールは、本にむちゅうになっているので聞こえません。
「カピール！ カピール！ いないの？ カピール！」
おかあさんはテーブルのところにやって来ました。
「カピールったら！」
「え、なに？ 呼んだ？」
「呼んだじゃないわよ！
さあ、早く、おとうさんのところへ行って、
朝ごはんですって言って来て」
おとうさんは、とおくの畑で仕事をしているのです。
カピールは本をもったまま、とびだして行きました。
―― 以下略 ――（絵本のデザインは、このページと同じではありません）
